歯科医師コラム

口腔ケアはやっぱり大事

'14.10.15

近年になって歯科衛生士による口腔ケアが肺炎や上気道炎などの呼吸器感染症予防にも有効であることがいわれております。歯科医院での専門の口腔ケアは齲蝕予防や歯周病予防に効果的なだけなく、口腔内細菌や日和見感染症起因微生物を減少させることにより、肺炎、上気道炎、インフルエンザの発症も抑制されることが示唆されています。
要介護高齢者の誤嚥性肺炎による死亡率は著しく高く、その予防には薬物療法による嚥下反射の改善や、食事療法、そして口腔ケアなど様々な対応がなされています。誤嚥性肺炎とは、口腔内の唾液や細菌が誤って気道に入り込むことで起きる肺炎です。誤嚥は特に夜間に起こりやすく、誤嚥を起こしても「むせ」などの自覚症状がないことがあり、これを繰り返すと誤嚥性肺炎を起こします。また、胃の内容物が嘔吐により気道に入った場合にも誤嚥性肺炎が起こることがあります。高齢者に多くみられる誤嚥性肺炎の原因の一つとしては脳血管障害による嚥下反射と咳反射の低下による口腔内細菌を含む唾液の誤嚥があげられています。そして研究によって、肺炎を発症した患者の患部から分離された細菌とデンタルプラーク細菌が一致し、デンタルプラーク細菌の誤嚥が肺炎を起こしていることが明らかにされております。また上気道に感染している細菌はインフルエンザ感染を誘導し、肺炎などを重篤化させることも分かっています。呼吸器感染症予防の手段として口腔内細菌数を減少させる口腔清掃を中心とした口腔ケアが有効と思われます。