歯科医師コラム

実践することの難しさ

'15.05.13

先日娘が2歳になったのを期に唾液検査をやってみた。唾液検査とは口の中からつばを採取し、その量や性質、口の中の細菌、主にむし歯を作る菌(SM菌)とむし歯があると増える菌(LB菌)などを調べるものだ。まだ時間いっぱいガムを噛んでいることが出来ないのでSM菌だけを調べてみた。

むし歯菌は生まれたての赤ちゃんには存在しない。歯がはえてきて初めて感染する。さらに1歳7か月から2歳7か月までは感染の窓といってとても感染しやすい時期だ。感染しなければむし歯にならないし、感染が遅ければ遅いほどむし歯は重症化しにくい。目安では2歳まで感染が防げればむし歯の重症化が防げると考えられている。

その2歳だ。結果は残念ながら見事にSM菌が普通にいた。キシリトールの知識も、食器を分ける意識もあるその道の専門家の娘がこれだ。よく考えてみると出産後は母親のキシリトール摂取量が少なくなっていたかもしれない。何よりも1歳半を過ぎてちょっと目を離すと、僕らの食事を横取りして食べていた。正確には目も弱り動きが緩慢になった祖母の食事だ。でも孤食より3世代の同居や食事は子供にメリットも多い。

普段は患者さん、とりわけ妊婦さんに偉そうにむし歯予防を語り、方法論を語り説明してきたが、実際の生活の中ではとても難しいことがわかった。もっと生活者に即したアドバイスが出来るようにしなければ。しかし感染したとしても発症したわけではない。まだむし歯は無い。今後は専門家として感染した娘の発症を食い止めるためにより生活に即した方法を考えよう。きっと患者さんのためにもなるはずだ。まだ始まったばかりだ。