歯科医師コラム

スペインの歯科事情

'15.12.16

先日、スペイン人の歯科医師をしている友人と連絡する機会があり、そのとき 「スペインでは、年配の歯科医師の先生方をのぞいて、詰め物にメタル(銀歯)は使わないよ」と言われた。

そのときは「スペインは、医療保険が充実しているのだろう」と、然程気にせず聞き流していたが、 スペインの医療保険を調べてみると、医科においては、国民医療保険で全額無料なのに対し、歯科治療においては、検査とレントゲン、抜歯のみが国民医療保険適応で無料、それ以外は全て実費とのこと!そのため民間の保険会社に加入して歯科治療を行う人や、とことん悪くして抜歯になるまで放っておく人もいるらしい!

日本では、国民医療保険(治療費の何割かを負担)適応の詰め物や被せ物となると、犬歯(糸切り歯)から犬歯の前歯を除いては一般的に銀歯、部位によってはプラスチックの白い歯が保険適応だが、ここ最近「CAD/CAM冠」というコンピューターで製作されるセラミックとプラスチック配合の被せ物が、これまでプラスチックが保険適応だった同部位に適応されるようになった。

ところで、どうして国民医療保険が利かないスペインで、みんなが白い詰め物や被せ物を入れているの・・・?

今回のコラムの投稿に際して、さらにスペインの歯科事情について詳しく知りたいと思い、再度友人にメールを送信した。

ところが、ちょうど彼女のbabyがもうすぐ誕生するとのことで、この質問に関する回答は当分お預けになってしまった。

なんとも中途半端なコラムの内容で申し訳ないと思いながらも、スペイン(に限らず欧米)と日本では、文化の違いや考え方の違いが、こうした「銀歯」ひとつにも現れているような気がした。

とりわけスペイン人はありのままであることを尊重し、canas(スペイン語で白髪)になることも自然なことと受け止める人が多いと聞く。そう考えれば、治療後の歯の色も、天然の歯の色と近いものを選ぶことが、ごく普通の感覚なのだろう。そして、もうひとつ、スペイン人に共通してみられることは、とにかくよく笑い、よく話すということ。陽気なラテン気質を受け継ぐ(なかには異なる気質の人もいるだろうが)彼らにとって、人と人とのコミュニケーションは、“ずばり!生きていること”そのもののようだ。そのとき、お口の中で銀歯がギラギラ光るというのは、なんとも不自然なことなのだろう。

こうしてみると、人と人とのつながりを考えるうえで、「歯」の役割はとても重要であるということに改めて気付かされた。

今度、是非スペインを訪れて、彼女の愛らしいBabyにご対面しながら、さらにスペインの歯科事情に触れてみたいと思う。

文:alcachofa