歯科医師コラム

続・親心

'18.12.17

 昨年、5歳の娘が反対咬合でというコラムを寄稿したが、それから1年半経過し永久歯への萌え変わりが始まった。

 

 上の子も萌え変わりが遅めであったが、娘も同様で幼稚園のお友達は大人の歯が出て来たのに、自分はまだだと少しやきもきしていた様子。世のお母さん方にも心配になる方が多いようで、しばしばご相談を頂く事柄のひとつではある。

 

 そうこうしているうちに、下顎の6歳臼歯(前から6番目)が頭を出し始めた。患者さんの口の中では見慣れた風景ではあるが、我が子となればやはり感激するもので「あれ!?○○ちゃんの歯茎、白くなって来たよ!もうすぐ出てくるんじゃない??」からはじまり

 

 「萌えたて大人の歯はムシ歯になりやすいから、しっかり歯みがきしてフッ素のジェルで仕上げしようね」なんて子供の気分を盛り上げていたのであるが…

 

 ゆっくりゆっくり全貌が見えて来た6歳臼歯は、溝の部分が妙に茶色く透けているエナメル質形成不全。

 

 エナメル質は歯の表面にある非常に硬い層で、人体の中で最も硬い性質を持っているが、その層が何らかの理由で正常に作られないのがエナメル質形成不全であり、これによってムシ歯になるリスクが非常に高くなる。

 

 このエナメル質形成不全や、歯の数が足りない、奇形歯といった症例は日々の診察や歯科検診で時折見かけるが、統計こそ取っていないものの以前よりその頻度が増しているような気がして、同窓の友人と話題にしていたところであった。

 

 歯並びは矯正で治せるが、歯の質はそう簡単に治せるものではない。娘の歯の形成不全は程度的には中程度よりやや悪く、毎日フッ素ジェルで仕上げをして少し表面に光沢が見られるようになっては来たものの、就学前検診では夫が「お父さん、○○ちゃんの歯なんですが…」と

 

 きっちり指導を受けて来た(指導して下さった先生、ありがとうございました)。

 

 夜の歯みがき後のフッ素トリートメントは娘の日課になり、仕上げ磨きの後は何も言わなくても自分でやるようになったが、患者さんの口の中に同じような歯を見かけると「お互い頑張りましょうね」と思いながらご両親に説明をする昨今である。

 

文:hanimalu