歯科医師コラム

犬歯

'25.11.21

昨今クマの出没の頻度は恐ろしいものがある。街中だろうが昼だろうが夜だろうが何時出くわすかわからない。玄関の開け閉め、子供の登下校、車を乗り降りする一瞬一瞬にも気を緩めることができない。ニュースで見る捕獲されたクマは、雄たけびを上げ、牙をむき出して威嚇してくる。

ん?、牙?犬歯?なぜ熊歯ではなく、虎歯ではなく犬歯?ウイキペディアで調べてみた。
「犬歯(けんし、Canine tooth)は、歯列上の位置により歯の形と機能が異なる異形歯性である哺乳類の歯種の一つ。犬歯は上下顎それぞれに一対(計4本)ある。犬で良く発達しているため、犬歯と言うが…(一部抜粋)」だそうだ。哺乳類だけなんだ。Jawsは牙だけど犬歯じゃないし、ドラキュラも昔は哺乳類だったけど生まれ変わったんなら化け物だから犬歯じゃないのかもしれない。いずれにしても他の歯と比べてもだいぶ目立つし怖そうだ。

人間も哺乳類だから犬歯がある。けど雑食だからか、熊ほど、犬ほど目立たない。でも解剖学的には最も長い根を持っていて、統計学的にはなぜだか下の前歯の次にむし歯になりにくい。結果、年老いてもかなり遅くまで残っている可能性が高い歯だ。歯科医師は人間の犬歯をとても大切だと思って何とか残そうとしたり、有効活用しようとしたりと日々悪戦苦闘している。

一般の方にも、是非「犬歯」の大事さを解って欲しい。動物の牙(犬歯)ほど目立たないけど、人間の犬歯もそれはそれは大事。「牙を抜かれた」という言葉は「勢いを失った」「弱体化した」「腑抜けになった」(AIより)という意味があるそうだ。「八重歯が目立つから抜いてください」なんて話もたまに聞くけど、神様から頂いた一対しかない贈り物。大切に使ってくださいな。

文:やんばるくいな